COLOR'S MICHIHIRO MATSUO

定番のレッドヘッドからテスターカラーまで、アピアルアーには様々なカラーリングが施される。ルアーフィッシングの歴史が築いた基本から生まれる派生カラーから、工夫と考察を垣間見ることができる。アピアのこだわりカラーを紹介。

さて、諸説言われているカラー考察自体が基本的には人間目線である。科学的に魚の脳を研究しても、それすらベースは人間の作ったものであるという事を忘れてはならない。そんな中、今現在、様々なカラーリングのルアーがリリースされており、それぞれのカラーがこの人間目線でマトリックスを形成しているという事を理解してもらった上で、僕のカラー考察を書いてみる。

大きく分けて目というのは視力と色覚の2つから成り立つ。視力は言わずもがな、形状をどれだけ認識できるかという部分。そしてカラー考察に関わる部分としては、もう一つの色覚認識の部分となってくる。人間ならば、いわゆるグラデーションの認識が可能で、赤から紫へと徐々に変化していく微妙な色彩変化を見分ける事が可能だが、実際シーバスはどうだろうか? 先に書いてしまえば、人間に比べてシーバスは明らかに色盲であるという事である。それはごく単純に、ベイトとはかけ離れた自然界に存在しないカラーに反応を見せる事からも伺える。

また、人間とは生活環境が決定的に違う。彼らは水中で紫外線を通して色を認識し、それらの補助を失う時間になれば側線でターゲットを認識するスイッチへと切り替わる。僕ら人間が暗闇で色の判別が低下するのと同様に、彼らも照度がない環境では色覚能力が著しく低下するのである。 人間よりもはるかに劣る視力と色覚を持つ魚に対し、僕らは少しでも捕食の補いを目的としてカラーを乗せているわけだが、「カラーは関係ない」「カラーは重要だ」と意見が二分するのは、結局のところ、どこまで突き詰めて考えるかに寄る部分である。ただ一つ言えるのは、無視は出来るが突き詰めてマイナスになる要素は一つも無いと言う事だろう。

先にも書いたように、紫外線の補助というくだりは主にデイゲームにおいて言える事だが、デイゲームでも濁りや水深、底質などで紫外線の届く量は違う。そういった場合、カラーの使い分けはナイトゲームよりも重要度は増していくだろう。また逆に、暗闇におけるカラーローテーションにおいても「見えないからこそ気を遣う」という突き詰めた考えで行けば、カラーローテは意味のある行動となる。

事実、ある特定のカラーに集中してバイトを得るという実体験を、多くのアングラーが経験している。カラーを変える事で魚が釣れたら、新たな考察も出来るし、何よりタクティクスの完成度が上がった喜びも増える。 カラーローテーションは魚の水揚げを飛躍的に上昇させる材料である、とは言わないが、釣りの完成度や満足度を高める為には、欠けてはならないものなのかも知れない。

では、実際のところ松尾はどうか?と聞かれたら、もちろんベースはあるのだけど、極限まで突き詰めてはいない。頭を使い過ぎてしまう悪いクセもある。 ゆえに、現場におけるカラーローテはベースから外れる事なく、至ってシンプル。それをアピアルアーのカラーラインナップに反映させていると言ったところだろうか。

使い分けチャート
  • レッドブルダスト
    赤腹(レッドベリー)を採用する事でナイトゲームや濁り時にはシルエットを細く見せる効果がある。ボディの表面にはグリッター加工を施し、フォール時には魚の鱗に似せた乱反射を発生させる。直線的な光を放つメッキ塗装と違い、多角的に放つフラッシングはルアーから近いターゲットに対してナチュラルにアピールする。反面、遠くのターゲットに対しては照射力が弱い為、集魚を考慮する場合はメッキやホロとの使い分けが必要。
  • レッドヘッド
    視認性が大きく違うカラーを組み合わせる事で、ルアーのサイズを実際よりも小さく見せる効果がある。例えば同サイズのパンチラインでイワシカラーなどと比較した場合、同じ動きと波動を持ちながらもシルエットは2割ほど小さく映る。特にナイトゲームで生きるカラーで、飛距離は必要だがルアーのサイズを上げたくない時(ベイトが小さい等)などに有効。また、ルアーを後方から見た際にベイトのエラの中をイミテートしているとも言われている為、ヘッドの赤い塗装は斜めに塗る事が多い。
  • チャートバックピーチ
    表層でのアピール力に優れた視認性の高い蛍光色カラー。マヅメ時の低光量で投入する事が多い。一見、濁りに強いイメージだが、グリーン系や金などの方が濁り時のアピール力(視認性)は高い。水色(みないろ)はクリアーだが、周辺が薄暗いなどの状況で使用したい。マヅメ時や水面への透過性が弱い街灯廻り(橋が高い等)でパターンに嵌る事が多々見られる。
  • イワシ
    季節ベイトであるイワシに似せたカラー。鏡面に近いメッキボディはフラッシング効果が強く喚起能力に優れている。ナチュラルネームだが光を集めて強く放つ特徴がある為、ナイトゲームや濁り時にも威力を発揮する。ただし日中のゲームで、尚且つ低活性時に使用する場合は意外とスレる場合もある為、グリッターカラーとの使い分けが必要。
  • ボラやん
    周年ベイトであるボラに似せたカラー。ほぼ全国的に分布するベイトである為、地域差などが少ない定番のカラー。シーバッシングでは最も出番が多い色となる。このカラーに関しては視覚に訴える事を主とし、バックに鱗模様、サイドにはホログラムを採用し、ベイトライクなリアリティを追求している。フラッシング効果が高い為、水深のあるフィールドでも出番が多い。
  • コットンキャンディ
    見た目の派手さとは裏腹に、コットンキャンディはどちらかと言えばナチュラルカラーである。アジなどの体表を斜めに見た時にそれを理解できる。また、キャンディーと言われる赤・黄・青などの原色配置は、魚が識別しやすい色とも言われており、派手な外見からは想像できないほど理にかなったカラーである。いくつかのベイトが混在している時なども捕食に偏りが少ないカラーとなる。
  • ジョーカーXX
    RED中村考案のプロスタッフカラー。ブラックボディは光の下ではシルエットを強調する一方で、光の無い場所では全体的にシルエットを小さく見せる効果がある。レッドヘッドやレッドベリーがルアーの一部を小さく見せるのとは一線を画す効果がある。側面のカラーリングに関する意図はコットンキャンディを参照。
  • レッドビア
    村岡昌憲考案のプロスタッフカラー。透明度の低い東京湾奥で生まれたカラー。投入する濁りの質としては、茶系よりも緑掛かった水色(水の色)でより威力を発揮する。暖色系のバックとややゴールド寄りのマットなオレンジは濁りの中でもアピール力が強く、真夏の汽水湖や止水域などの悪条件下で特に高い実績を誇る。
  • ハマーナイトダスト
    濱本国彦考案のプロスタッフカラー。チャートがかったブルーバックと乱反射を発生させるグリッター塗装の組み合わせ。フラッシング効果がある為、チャートバックピーチよりもアピール力は強い。フラッシングの効果を得るには光量の見極めが重要。朝マヅメによく見られる、ベイトの活性が上がり始める瞬間に投げたい。
  • マツオデラックス
    松尾道洋考案のプロスタッフカラー。コーヒー色の濁りや、瀬の絡みで生まれる白波などでも魚にしっかりと気付かせる事が出来るカラーリング。特にゴールドは増水時などに見られる濁りの中でもアピール力が強く、主にデイゲームを意識して組み合わせたカラーとなっている。波気があって砂が舞い上がるようなサーフゲームなどにも有効。
  • ゴリ☆一文字
    橋本健二考案のプロスタッフカラー。季節ベイトであるキビナゴをモチーフとし、それを捕食ターゲットとするヒラスズキや磯マルにマッチングするカラー。メッキ塗装はサラシの中でも強いフラッシング効果を生む為、それが目標物となってミスバイトを軽減させる役割がある。季節ベイトが入って来ると偏食傾向となる為、ヘッドからテールまで施した黒い一文字はキビナゴパターンでは必要不可欠である。
  • ボラダスト
    定番であるホロ系のボラカラーよりも、若干、フラッシング効果を落としたグリッター採用のカラーリング。ホロ系でスレた場合や、光量が強すぎてホロだと光が飛び過ぎるような時に使用。また、深いエリアよりもシャローで構成された干潟などで強さを見せる為、フィールドの構成でボラカラーとの使い分けが出来る。