広島湾のクロソイとタケノコメバル
私のホームグランドである広島湾は、瀬戸内海の中でも比較的大きな湾であり、島が多く複雑な地形と潮流が特徴だ。
・海域面積:約1040㎢ (瀬戸内海全体 約23000㎢)
・平均水深:約25m
・水温変動:冬季約10℃ / 夏季約29℃
であり、瀬戸内海西部を代表する閉鎖性海域である。
広島湾は、一見すると穏やかな海に見えるが、その実態は非常にシビアだ。
潮位差は約4m。
それに伴い潮流が比較的速い。
更に水温変動が大きく、魚のポジションが常に変化する。
昨今は、温暖化の影響なのか、私が少年時代だった頃とは随分と変化してしまった。
そんな広島湾には、幻とまで言われる根魚達が現在も存在する。
その中で今回取り上げたのが「クロソイとタケノコメバル」だ。
この2魚種に共通するのは、「大型個体の希少さ」であり、
30年前の様に良型が偶然釣れる機会も少なく、鮮魚コーナーで見掛ける事も殆ど無くなった故に、アングラーサイドには「もう居ないかも知れない」という不安が常に付きまとう。
つまり、釣果を左右するのは環境変化に耐えうる生息場所を見極めることにあり、季節と水温、そしてスポーニングに絡む行動変化を追う事である。
◆広島湾における年間サイクル
まず、この釣りを成立させる為には、2魚種の生態と海域の季節感を出来るだけ正確に理解する必要がある。
【タケノコメバル】
カサゴ科の根魚で、お腹の中で卵からふ化させた稚魚を産む卵胎生魚であり、岩礁帯や藻場に生息する居着き性の強い根魚である。
基本は単独行動で縄張り意識が強く、待ち伏せ型の捕食を得意とする。
瀬戸内海では、夜行性寄りだが、濁りやローライトな状況であればデイゲームも成立する。
・生存可能水温 約5℃~28℃
・適水温 約12℃~20℃
・高活性 約14℃~18℃
・生息水深1m~20m
・釣獲水深1m~10m
・成長速度1年:10~15cm 2年:18~22cm 3年:25cm前後 5年 :30cm前後 7年 :35cm前後 8~10年:40cm前後
・産仔数 30cm前後:約1万~2万尾 35cm前後:約2万~3万尾 40cm前後:約3万~5万尾
・稚魚はある程度泳げる状態まで育て一度にまとめて産む。
・産仔後は体力を消耗してアフタースポーニングに入る。
広島湾のタケノコメバルは、秋の水温低下とともにシャローへ差し始め、捕食が活発になり、11月下旬頃からプリスポーニングに突入する。
そして、スポーニングの最盛期は概ね12月~1月。
この時期は、40cm前後の個体がシャローのストラクチャーに付きやすく、良型を狙って獲れるタイミングとなる。
2月~3月の産仔後もシャローで体力を回復する個体が見られ、5月頃まで再び捕食が活発になる。
しかし、タケノコメバルの特徴的なところは通年狙える点だ。
真夏の高水温期でも完全に姿を消すことは無く、レンジや時間帯を合わせていけば触る事が可能だ。
つまり、年間を通して成立はするが、晩秋~初夏が最も再現性が高いと言える。
【クロソイ】
メバル科の根魚で、岩礁帯やストラクチャー周りに依存して生活する待ち伏せ型の根魚である。
特にマヅメ~夜間にかけて活発に捕食を行い、水面付近まで浮上するタイミングもある。
基本的には縄張り意識が強く単独行動だが、条件が揃えば複数の個体で群れを形成する。
広島湾では、夜行性寄りだが、条件次第でデイゲームも成立する。
・生存可能水温 2℃~25℃
・適水温 10℃~18℃
・高活性 12℃~16℃
・生息水深 1m~100m前後
・釣獲水深 1m~15m
・成長速度 1年:10cm~15cm 2年:18cm~22cm 3年:23cm~28cm 5年:30cm~35cm 6年~8年:40cm前後 10年超:45cmUP
・産仔数 25cm~30cm:5千~1万尾 30cm~35cm:1万~2万尾 40cm前後:2万~3万尾
・産仔はタケノコメバルとほぼ同様だがクロソイは、より選ばれた環境でしか残らない。
広島湾のクロソイはタケノコメバルよりやや季節が遅れて繁殖に動く。
11月下旬~12月にかけて、交尾の為にシャローへ接岸して来る。
この時期から明確に狙える魚へと変わる。
スポーニングの最盛期は概ね2月~3月。
この前後がシャローで最も良型に出会えるタイミングだ。
そして、盛期としては12月~5月。
産仔後も、しばらくはシャローに残り、体力を回復させる為に積極的に捕食する個体も多い。
逆に海水温が20℃を超える頃には徐々にディ―プに落ちシャローから姿を消す個体が増加するため、初冬から初夏が最も再現性が高いと言える。
◆水温とリンクするポジションの変化
この2魚種はどちらも冷水志向が強い魚である。
広島湾では海水温が18℃を下回るタイミングから一気に狙い易くなる。
・18℃以下でシャローに差す
・10~16℃で最も安定して狙える
・20℃以上で徐々にディープへ落ちる
おおよそではあるが、狙う基準を持っておけば、釣りの精度が大きく変わる。
広島湾は流入河川の数が多く、塩分濃度が下がり易い。
まとまった降雨による水温と濃度の低下がトリガーになる事も多い。
一見すると悪条件にも思えるが、実は接岸や捕食のきっかけを生む要因にもなり得る。
◆釣り方とリグの使い分け
クロソイとタケノコメバルを狙う上で重要になるのが、状況に応じたリグの使い分けだ。
岩場や海藻が絡むエリアでは、根掛かり回避と食わせ能力のバランスが釣果に直結する。
まず、広範囲を探りながらバイトを得たい場面ではフリーリグが軸となる。
シンカーを先行させ、ソフトルアーが遅れてフォールする事でナチュラルなアクションを生み、違和感なく口を使わせる事が出来る。
実際にバイトの多くはフォール中に集中しており、この間をいかに演出できるかが重要になる。
一方で、ストラクチャーの奥やピンスポットをタイトに攻める場合にはテキサスリグを使用する。
高いすり抜け性能を生かし、海藻の中や岩の隙間へ送り込む事でリアクションバイトも誘発出来る。
私は、上記2つのリグを宙層とボトムのスイミングとリフト&フォールで使用している。
更に、魚の活性が高い状況や根掛かりのリスクが少ない場所では、宙層を素早く探れるジグヘッドリグが有効だ。
スイミングによって広範囲を効率良く探る事ができ、剥き出しのフックですっぽ抜けも少なく、潮目やストラクチャーの周辺に浮いた個体に対して、特に効果的である。
◆タックルが持つ役割
この釣りにおいては「食わせ」と「獲る」を分けて考えている。
低活性時に必要なのは、違和感を極力排除した繊細なアプローチだ。
一方で、ヒット後は一瞬で主導権を握り、ストラクチャーから引き離す強さが求められる。
つまり1本のタックルで全てを成立させるのではなく、食わせる為のセッティングと獲る為のセッティングを意識的に使い分けることが重要だ。
この切り替えが出来るかどうかで、キャッチ率が上がる。
「食わせ重視」
【グランデージブルート ベルエポックS86M】
・繊細さを活かした食わせを担当
8ft6inのオールラウンドなロックフィッシュ専用ロッドであり、取り回しが良く、短過ぎないことでストラクチャーから魚をかわし易く、飛距離も出る。ミディアムパワーで設計されたブランクはシャープでありながらしっかり曲がり込むので、タケノコメバルとクロソイの吸い込みバイトにも強い。
5g~14gのフリーリグ・テキサスリグ・ジグヘッドリグで2.5in~4inのソフトルアーを使用している。
特にプレッシャーが高い状況やショートバイトが発生する場面で真価を発揮する。
「主導権を取る」
【グランデージブルート ストレッチフォーS88MH】
・スピニングタックルでの制圧を担当。
当初の目的は大型のキジハタを想定して導入したが、タケノコメバルとクロソイの強烈な突っ込みを止める為にも必要不可欠な存在だ。
ストレッチフォーはパワフルなバットに設計されているが、ティップがしなやかな特徴があり、スイミングアプローチでも扱い易い。
7g〜14gのフリーリグ・テキサスリグ・ジグヘッドリグと6in前後のソフトルアーで使用しており、魚を掛けた後に主導権を取りたい場面では欠かせないロッドだ。
「万能で広く探る」
【グランデージブルート クエスターC72M】
・ベイトタックルの良さを活かした食わせを担当。
クエスターは広範囲を手返し良くハイテンポで打ち続ける状況でかつ
海面までの距離が近い状況でハード・ソフトルアー双方のアプローチに対応する。
巻きの釣り中心的存在だが、ボトムを丁寧に探る釣りにシフトしても高感度で曲がり込むブランクが活きる。
5g~14gのフリーリグ・テキサスリグ・ジグヘッドリグと4in前後のソフトルアーの他に、ドーバー82S・マイヨール70SL等を使用した根魚プラッギングにも最適だ。
「強引に獲る」
【グランデージブルート サイドキックC83MH】
・遠投性能とパワーを活かしたベイトタックルでの制圧を担当。
足場が高い場所やストラクチャーの質によって使い分けることで、極力無駄打ちを減らして確実に獲る為のロッドだ。
8ft以上のロッドは高い位置でリグを操作出来る為、根掛り回避率が上がる。
7g〜14gのフリーリグ・テキサスリグ・ジグヘッドリグと6in前後のソフトルアーが中心となるが、高比重ワームとネイルシンカーを使用したストーンリグでの実績も高い。
根に潜られるリスクが非常に高いエリアでは最も信頼しており、ベイトタックル1本で大型を狙うならサイドキックが最適だ。
◆Juicy 3 1/2樹脂ブレードチューン
ロックフィッシュゲームのキモとなるのが、樹脂ブレードチューンだ。
ジューシーは「カスタムアイテム」として考えており、装着することで
・微振動の増幅
・フラッシング効果
・フォール時のアピール強化
が加わる。
樹脂ブレードは水中の僅かな水流でも微振動を発生させ、視覚と側線の両方にアピール出来るのが強みだ。
多くのフィールドで、この視覚と振動の複合アピールが有効だと感じており、特にマヅメ時や流れが効いて活性化したタイミングでは、バイト数に明確な違いが出る。
◆ 最後に
クロソイとタケノコメバルは、条件が揃えば再現性のあるターゲットになる。
全国的に見れば決して珍しい魚ではない。
ただし、広島湾では簡単に出会えない存在になった。
だが、フィールドに通い込み、状況を観察していけば、狙った一尾に近付ける。
運ではなく、積み重ねた経験こそが、その一尾との距離を縮めてくれる。
そして、手にした一尾は間違いなく記憶に刻まれる。
産仔期の個体や大型個体ほど、その価値は高い。
それは単なるサイズではなく、次の世代を繋ぐ重要な存在だからだ。
だからこそ私は可能な限り、リリースという選択も大切にしていきたい。
資源が限られる今、1人ひとりがこの釣りの未来を左右する。

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